ただいま、東京帰省中です。東京へ帰ってくる毎に、否応なしに入る羽目になる某コーヒーストアチェーン。ちなみにこの店が自慢げに売っているカフェラッテもエスプレッソもイタリアのもので、イタリア語なのだが、イタリアではもっと安くておいしいそれらがどこでも手に入るので、某チェーンはイタリアには一軒も進出していない。で、なぜシアトルの企業があたかも自国オリジナルのような顔をしてカフェラッテを売るのか、エスプレッソなのか、常々疑問に感じている私が、東京でしかたなく利用するときはいつもこんな感じだ。
「いらっしゃいませ〜、ご注文をどうぞ」
「えーと、ああ、カフェ・ラッテ」
「は? あ、カフェラテですね?」
「いえ、カフェラッテをください」
(カフェ・ラッテとはご存知のようにコーヒー牛乳のことで、カフェはコーヒー、ラッテが牛乳。イタリア風にするのならラッテとして欲しかった)とか
「カフェ・コン・パンナを一つ」
「あ、パナですね〜」
「あのね、パナじゃなくてパンナ、パンナ・コッタと同じ、あのパンナでしょ?」
(パンナは生クリームのことで、カフェ・コン・パンナはコーヒー・ウィズ・ホイップクリーム。コン=Withなんて難しい単語を使う前に、Pannaぐらいちゃんと読んで欲しいな、ローマ字読みなんだから、イタリア語は)というような大人気ないやり取りを、罪もないバイトさん相手に繰り広げている。
前置きが長くなってすみません。つまりこれほどに日本で、東京で、イタリア食はすでにブームでなく、定着していると言われているが、その定着振りは本物のイタリアとはちょっと違うことが多いといいたかったのだ。日本人が作って日本人が食べるので、違っていてもまったくかまわないと思うのだが、そういうのを食べ慣れた自称通人がイタリアへ来て、「あれ、ここのピザ、ひどいね。白金の某のほうがずっとおいしい」なんて言ったりしてどうかと思うことが間々ある。
そんな中で、我が実家、東京都練馬区早宮町にある「タッポスト」は、まことにイタリアらしい、ナポリ風ピッツァの店である。なによりピッツァがほんとうにおいしい。硬質小麦粉で作った生地は中央は薄く、ふちはぷっくら膨らんでモチモチだし、トマトや具の加減も生地を邪魔しない分量で、イタリアで食べる本格的なナポリ風ピッツァと遜色がない。無口なことにかけては昔の日本男児に引けをとらず、お世辞などというものを知らない我がイタリア人の夫はイタリアの某レストランでシェフをしているのだが、その彼が目をむいて「おいしい!ここのご主人に挨拶したい」といったほどのおいしさなのだ。
ご主人の青木さんはもと一流企業のエンジニアだそうで、イタリアに研修旅行か何かに行ってイタリアのピッツァにほれ込み、脱サラをして今の店を始めた。始めるに当たってイタリアで修業をしたのだが、それはたった3ヶ月ほどだそうで、それなのに自作で本格的な石窯を店内に作って、今では都内全域から予約の客が引きも切らない人気店にしたのだから、天才なのかもしれない。お料理やデザートは普通の日本風イタリアンだが、忙しい時間にピザだけ焼きまくったら、ピザ以外の料理やサーヴィスは他のスタッフに任せて、馴染み客のところへおしゃべりに出てきてしまうあたりも、とてもイタリア的でよいのである。
Pizzeria TAPPOSTO da Aoki
練馬区早宮4−37−29 ラフィット豊島園1F
TEL.03(5999)3988
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