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海外「食」レポート
Paris Report
Vol.14 レストラン“ローラン”のケアシガニのジュレ
Vol.13 コルシカ
Vol.12 Cantine du Troquet(トロケのカンティーヌ〈食堂料理〉)
Vol.11 アラン・パッサールのバラのブーケ
Vol.10 ティエリー・マルクスのエクスポジション
Vol.9 Agapé(アガペ)での響宴
Vol.8 フレンチの新しい潮流“ビストロノミック”
Vol.7 ミシュランガイド・フランス2008年度版刊行!
Vol.6 ニュー・オープンパティスリー“カール・マルレッティ”
Vol.5 『ルドワイヤン』の甘い響宴
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Vol.3 食とデザイン
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海外「食」レポート 私を刺激するヒト・モノ・コト〜Pairs, London, Torino, New York〜



Paris Paris Vol.13 2008年10月10日
コルシカ

Paris・筆者プロフィール
伊藤文(いとうあや)

1993年渡仏。フランスにおける食を中心に、ヨーロッパの歴史や文化を掘り下げる取材を重ねる。
著書に「フランスお菓子おみやげ旅行」(東京書籍)。訳書に「招客必携」、「拝啓 法王さま 食道楽を七つの大罪から放免ください」(共に中央公論新社)など。
3月には、翻訳を手掛けた、ピエール・ガニエール&エルヴェ・ティス著「料理革命」、ジョエルロブション著「ロブション自伝」(共に中央公論社)の2冊が新たに刊行されています。

今年20年目を迎える”グルマンガイド”出版の記念パーティがブリストルで開催された。フランス津々浦々から、賞を獲得した生産者などが集合。彼らの生産品を、たっぷり味わう機会に。ブルゴーニュのカシスのジュレや、バスク地方の生ハムなど、和気あいあいのデギュスタションは夜遅くまで続いた。

 久々にテアトルを楽しんだ。マドレーヌ劇場にて“Elle t’attands(彼女は君を待つ)”。ヒロインは、テアトルは2度目の挑戦というレティシア・カスタということで、とても話題になっている。また、脚本と演出がフロリアン・ゼレールだったので、私にとっても、さらに興味をくすぐられる作品だった。彼は1979年生まれの若手の作家で、いくつかの作品を読んだが、男女間の恋愛を悲劇になりすぎず、運命論者的に描いていて、とてもポエティックで美しい。2004年には、フランスでも権威ある文学賞の一つ“アンテラリエ賞”を“最悪についての幻惑”で獲得。また、2006年発表のテアトル“もし君が死んだなら”は、アカデミーフランセーズより若手作家賞を獲得している。才能があり、そして彼はかなりの美男。そうした意味でも、注目度の高い作家で、あのカルラ・サルコジも親交を持つ。
 舞台はコルシカ。輝くような海を目の前に聳え立つ、ある家族の家が舞台。パリに住むアナ(レティシア)が、バカンスを過ごしに、コルシカにある実家へ帰ってくる。恋人のシモンと一緒に。恋人を連れてきたという喜びに溢れるアナ。アナは、シモンがコルシカに訪れたのは初めてと思っていた。しかし、アナの母親が何気なく投げかけた質問で、実は1度来たことがあると聞いてショックを受ける。それは去年、前妻と2人の子供と一緒に。実はシモンは離婚したばかり。やっと晴れて付き合えるようになった2人だが、男女の心にはすれ違いが生まれる。まだ未来を見つめられない男と、新しい生活を夢見る女。コルシカに着いた翌朝、シモンは山へ行くといって出かける。しかし、シモンは帰らない。待ち続けるアナ...。舞台装置もよくできていて、美しい海は、本当にコルシカを思わせた。昼、太陽に輝く海、夜、月に照らし出される海。白い石造りの家...。

イメージ1 私はこの夏初めてコルシカに訪れた。たった4泊5日のバカンスだったが、初めてのコルシカは、とても懐深く、私を迎え入れてくれた。ソヴァージュな山々、七変化の海岸、コバルトブルーの海。まるでフランスとは思えない異国の地。そう、最南端のボニファシオからサルディニア島も眺めることもできる、地中海に浮かぶ“美の島”なのだ。この滞在では、コルシカはポルト・ベッキオに住む日仏カップルのバッチ夫妻にすっかりお世話になった。ポルト・ベッキオから山間に、車で30分ほどのフィガリというところにある飛行場に降り立ったが、彼らは車で迎えにきてくれ、滞在場所は、旦那さまジャン・ジャックの両親の持ち家で、ただ今は妹さんのベアが住む、海を眺めることのできる高台の家という最高の立地! コルシカでは何もかもが美しく、優しく、そして壮大だった。

イメージ2

 バッチ夫婦を知ったのは、1年半ほど前。彼らがパリに訪れた時だった。奥様のアリサさんと、ジャン・ジャックはニューヨークで知り合って、ジャン・ジャックの生まれ故郷であるコルシカに3年前移り住んだという。アリサさんは、とてもエネルギッシュでまっすぐな、太陽のような女性。ニューヨークでは、金融関係の企業に勤めていた。ジャン・ジャックはコロンビア大学を卒業し、将来を期待される科学者として注目されていた。2人ともとても優秀だ。しかし、ニューヨークのクレイジーな生活には合わず、生きる拠点をコルシカに選んだ、ということだ。そして2人はコルシカで結婚した。

イメージ3 彼らがコルシカで立ち上げた会社“MIDORINOSHIMA”では、新潟県の越の華酒造で醸造されたお酒“カワセミの旅”をフランスに輸入している。このカワセミをパリのレストランに紹介すべく、パリに営業をかけに2人でやってきたときに、たまたま知り合いを通じて知り合ったのだった。滑らかな口当たり、パイナップルやココナッツをも思わせるエキゾチックな香りと味わい。爽やかさもある。今までに味わったことのない味わいのお酒だった。特にスイーツに合いそうだ。そして、何ともいえない穏やかだがエネルギッシュな2人の人柄にも、とても惹かれた。それで、愛すべき長年の友人であるショコラティエにこのお酒を託すことにした。酒粕を加えて、甘味の豊かな、それはチャーミングなボンボンショコラとなった。
 お酒をフランスで売っていくということは大変だ。やはりワイン王国だから、ワインリストにお酒を加えるとなると、よっぽどの売りがないと難しい。しかし、近年は本物の日本食への興味や理解も深まって、有名なレストランなどが、お酒を取り入れるようになった。日本人が経営する、コンセプトのしっかりした和食店も増えてきた。これからの需要は高まっていくだろう。バッチ夫妻も、そうした流れに乗るべく、パリに時々訪れては、レストランまわりなどをしている。また、まずは地元からと、コルシカ島のレストランにも営業をかけ、いい関係が築き上げられているようだった。初日に連れて行ってくれた海辺のレストランでは、彼らが提案したお酒のカクテルもおいていて、評判は上々のようだ。

イメージ4

 コルシカで味わうお酒のカクテルは、なんともエキゾチック。こうした形でお酒が紹介されて、色々な人に興味をもってもらえるのは、また一つの可能性の現れで、とてもポジティブなことだと嬉しかった。コルシカ発信の日本酒なんて、悪くない。
 コルシカの話をして、コルシカの郷土料理ではなく、日本酒の話題となったが、コルシカ料理を語るには、4泊5日ではまだ浅い。次回の滞在後にそれは延期するとして。しかし、バッチ家族は、農園を持っていて、肉から野菜から、ほとんど自給自足であるのには驚いた。魚は釣りをして仕留める。私の滞在中に、ジャン・ジャックが鯛を釣って、アリサさんが調理をしてくれたが、それはとても美味しかった。そうそう、彼らは魚拓をしていて、これが素晴らしい副業になっている。この夏にはボニファシオでエキスポも開催したほど。完売との朗報が入った。
 彼らがパリにやってくるのはもうすぐ。家のそばのAMPELOSという優秀なカーヴでもデギュスタションが開催される。また、新たな彼らの飛躍を祈って!

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