ピエモンテの秋と言えば、白トリュフである。
フォアグラ、キャビア、そしてトリュフの「御三家」に、普段は対して興味のない私であるが、白トリュフだけは別物だ。ピエモンテに住む私にとっては、10月と11月は不景気も恐慌もどこ吹く風である。ただ機会あるごとにアルバ方面の高級レストランの門をくぐり、「手打ちタリオリーニ バターとセージ風味のソース和え 白トリュフがけ」とか「ココット&白トリュフ」(シンプルな卵料理との相性こそが最高!)とか「地元チーズのクリーミーなフォンデュソース 白トリュフ添え」などを今とばかりに堪能しては幸せに浸っているのである。料理の基本料金プラス白トリュフを15gぐらい削ってくれて50ユーロ増し、というような具合なので、お財布には相当な覚悟が必要だ。でもあの岩海苔とにんにくをかけ合わせたようなえもいわれない香り(こう書くとなんだかおいしそうじゃない?)があるだけで、ただのタリオリーニも目玉焼きも、100倍ぐらいおしくなると私は思うので、年に数度の散財も辛くない(そんなには)。
普段はもっぱらトラットリアやオステリア好きの私だが、白トリュフを食べるときは高級レストランへ行くことにしている。ピエモンテでは地元の特産品ということもあって、比較的庶民的なレストランでも白トリュフを出すところは多いけれど(あくまで比較的、です、トリュフは高いので。安トラットリアにはトリュフはありません)、そういう店ではあまり高い値段をつけられない、だから質のあまりよろしくないトリュフしか仕入れられない、しかし腐ってもトリュフでやっぱり高い。中途半端にお金を取られて、中途半端なものを食べるぐらいなら、超高級店で思いっきり堪能したほうがいいじゃないか、どうせ年に一回か2回か3回だ、というわけである。財力のある店はいい白トリュフを持っているのだ。だから逆にミラノの『クラッコ』あたりで、すごい白トリュフを出してきたりされて、地元民としてチッと悔しい思いをしたこともある。
さて、私のような白トリュフ好きを熱狂させるのが、年に一度行われる「アルバ産白トリュフのオークション」だ。熱狂させるといったって参加できるわけはなく(財力の問題ではなくて)、取材と称して見物に行くのである。しかもオークションの後はトリュフ尽くしのディナーがふるまわれる。テレビ放送もないし、参加資格を得るのはとても難しいとあれば、ジャーナリストという肩書こそが私の見方よ! そう、世のジャーナリストたちは、この手でイロイロと楽しい経験をしているはずである。
このオークションはアルバ郊外の小さなお城と世界の2都市を衛星でつなぎ、テレビ画面を通じて熾烈な戦いが毎年繰り広げられる。香港の青年実業家とか、ロンドンの中国華僑とか、モスクワの大富豪とかが財力にものを言わせて盛り上がる。第9回の去年は香港の青年実業家が750gの巨大トリュフを143,000ユーロ(約1千800万円)で落札した。ちなみに通常白トリュフの相場は1キロ3,000〜4、000ユーロ。2年前の2006年は香港リッツ・カールトン会場の中国華僑とパリのオテル・ド・クリヨン会場で参加していた俳優のジェラール・デュパルデュが競りに競って、最後はデュパルデュが負けるという非常にエキサイトな結果だったと記憶している。落札価格はやっぱり1キロ程度の白トリュフで125,000ユーロ。これには後日談があって、家へ白トリュフを持ち帰った華僑氏、冷蔵庫に入れたまま使い方が分からず腐らせてしまったという!
それに比べて今年は、アルバにも不景気風が吹いていたみたい。香港リッツ・カールトンが改修工事中だったという理由で東京で行われたそうだが、アルバと中継でつながれたのも東京だけで、ちょっと寂しかった。そして最高落札価格は24,000ユーロ。不景気なんだったらこんなところにお金落としてないで、レストランに行って白トリュフ食べようよ、と思う私は、やはり、思い切り庶民なのです。